和田彩花さんが結成し昨年10月に始動したバンド・LOLOET(ロロエ)、私はまだライブを観に行けていないのですが、ありがたいことにバンドの公式YouTubeチャンネルでライブ映像が公開され、ライブ演奏に触れることができました。
この記事を書いている5月6日の時点で、2月6日におこなわれた高円寺HIGHでのライブから5曲の映像が公開されています。
ライブ映像で感じるのは、一般的なポップミュージックとは明らかに異なる感触。多くの曲で一曲の中で曲調が大きく変化しているのは、いくつもの音源をコラージュして構築した録音楽曲を生で再現してるようにも感じ、あえてライブ的でない楽曲をライブで演奏する実験的な演奏のようにも感じます。
そして、空間を意識させる演奏だという感覚も覚えます。
ベースの弓弾きやエフェクターをかけたエレキギター、トランペットのロングトーンといった、長く持続する音が印象に残ります。
またギターにかけられたディレイや、ドラム、トランペットに深くかけられたリヴァーブも、やはり印象に残ります。
それらの持続する音や、反響と残響を伴った音が、緩やかに空間を埋めていくようなイメージ。
LOLOETの演奏は、客席が一体となって拳を突き上げたり、一緒に声を上げて歌うようなものではないけれど、ライブハウスという空間でなければ味わえない魅力を持っているものだと、映像を通しても感じさせられます。
LOLOETはライブ活動が重要なバンドだというのは、別の面からも感じます。
ライブ会場などで販売されているグッズのTシャツは、古着のTシャツにメンバー自身がシルクスクリーンでロゴを印刷したもの。3月にリリースされた初の音源はカセットテープ。
四半世紀以上前であれば、メンバー手作りのグッズやカセットテープの音源は、おそらくバンドがグッズや音源リリースを考えた場合に一番手軽に選べる手段であったかもしれません。
しかしいまは、スマートフォンからでも世界に向けて音源を発信することが可能で、グッズもネット経由で容易に作成ができる時代。
そんな時代に、あえてメンバー制作のTシャツ、カセットテープでの音源で、さらにTシャツは古着を利用、カセットテープも再生プラスティックを使用と、SDGsを意識したメッセージも見えてきます。
グッズ制作や音源リリースというバンド活動自体が、楽曲と同様にLOLOETの表現であるように思えます。
だとすれば、ライブというバンド活動の場に身を置くことで、観客もLOLOETの表現に参加し、作品の一分となることができるのではないか。
それはきっとLOLOETのライブが持つ特別な魅力ではないかと思います。
率直に書けば、自分がLOLOETのライブを楽しめるかどうか、わからないというのが正直なところです。でも、LOLOETというバンドはライブを観ることに意味のあるバンドなのだろうと考えています。
ここ数年ライブハウスから足が遠のいている上に、COVID-19流行の数年を経て腰の重さが増しに増している私なのですが、LOLOETのライブは近いうちに体験してみたいと思っています。
最後に、もうひとつ。
LOLOET公式YouTubeチャンネルで現時点での最新の動画『Le bouquet vert』のライブ映像が公開された3月25日には、笠原桃奈さんが在籍するME:Iのデビュー曲『Click』のミュ0ジックビデオも公開されました。
多くの人に受け入れられるものを目指し、それをひじょうに高いレベルで実現してるME:I。
いわゆる「ポップなもの」からは、何歩も離れた場所を選んでいるLOLOET。
かつて同じアンジュルムというグループで同時期に活動していたことのあるふたりが、それぞれのグループでそれぞれの表現をしていて、その作品が同じ日にYouTubeで公開されたことを、私はとても面白く、刺激的に感じています。