『すきっ!』について
2021年もハロプロ楽曲に限らずいろいろな曲を楽しみました。
その中でよく聴いたアイドル楽曲が、超ときめき♡宣伝部の『すきっ!〜超ver〜』です。
私は今年初めて知った曲だったのですが、元は同グループが改名前「ときめき♡宣伝部」だった2018年にリリースされたアルバムに収録されていた曲で、今年になってTikTokで曲が流行ったのを受けてリアレンジ・再レコーディングしてリリースされた曲ということのようです。
最初に曲を聴いたときの印象は、単純に楽しくて面白い曲だなというものでした。そのあと、何度も曲を聴いていくと、興味深い点にいくつも気づいていきました。
まず構成が面白い。ポップスによくある Aメロ→Bメロ→サビ という形式ではなく、セリフも入ってちょっとトリッキーなAメロから曲調がガラッと変わるBメロのあと、Cメロがあってサビになっています。さらに間奏を挟んでAメロに戻るのではなく、1番とはまったく違ったかたちでどんどん展開をしていき、再びCメロが出てきてサビへと続いていくという、かなり変則的な構成となっています。
そして転調が比較的多い。最初Cマイナーから始まって、サビで半音上に転調してD♭マイナーに。間奏で短三度転調してB♭マイナーになって、間奏明けで一音上に転調して最初と同じCマイナーに。そこから一音上に転調してDマイナーになって、短三度転調でBマイナーに。落ちサビで半音上に転調してCマイナーに戻って、また一音上に転調してDマイナーで最後まで。
わりと忙しく転調していきますが、半音転調や一音転調、短三度転調というスタンダードな転調の組み合わせで転調しているのが興味深いです。
また、転調の変わり目のメロディも注目ポイントです。
たとえば1番サビの直前の「わたしの毎日はラブコメに変わったんだ」
の「だ」の音は、転調後のキーの音が使われ、転調をなめらかにつなぐメロディとなっています。
1番サビ終わりの「君がキュンとキュンとしますよに」
の「に」の音も同様に転調後の音が先取りして使われています。最後のサビで同じメロディが出てくる「曲がり角で君に会えますよに」
ではそのあと転調しないので最後の「に」の音はスケール内の音になっていて、比較するとわかりやすいと思います。
転調しないと成立しないちょっと難しいメロディになっているので、メンバーがそれをしっかり歌えているのもすごいと思います。
落ちサビからの流れは、本当に素晴らしい。
徐々にリズムが盛り上がり「いつか結ばれますように あー!」
で一音上へと転調。この「あー!」での転調が、まさに歌詞の「弾けそうなんだ もうだめだ 抑えきれない」
の「抑えきれない」気持ちを具現化しているようです。
そこからサビを1回歌ってからの、2拍3連での「すき!」
の繰り返し。この「すき!」の繰り返しではメロディックマイナースケールが使われています。この曲は誰かを好きになることの楽しさやときめき、高揚感を歌った曲ですが、このメロディックマイナースケールを使った「すき!」の連呼には、誰かを好きになる切なさや苦しさ、そしてそれを抱えた上で「すき」だと口にするまっすぐさが表現れているように感じます。
作詞・作曲・編曲は中村瑛彦さん。ひとりで担当しているからこその、詞・曲・アレンジが一体となってひとつの世界を作り上げる楽曲になっているようにも思えます。
YouTubeには、ミュージックビデオだけでなく、ライブ映像やスタジオで収録されたパフォーマンスの映像も公式に配信されています。
メンバーひとりひとりに見せ場があり、ひとつの物語を観たような気持ちにもなるパフォーマンスは実に魅力的で、どの映像もおすすめです。
いくつもあるパフォーマンス映像から、個人的に好きなふたつを挙げておきます。
最後にひとつ、重要なことを書いておこうと思います。
私がこの曲『すきっ!〜超ver〜』を知ったのは、モーニング娘。の生田衣梨奈さんがインスタグラムのストーリーで紹介していたからでした。ありがとう生田さん。生田さんの推しメンバーは「超ときめきレモン」の菅田愛貴さん(=曲冒頭の「こーのーきーもーちー」の方)だそうです。
※文中引用は 超ときめき♡宣伝部『すきっ!〜超ver〜』作詞・作曲:中村瑛彦 より