Dr.Kの思い出

 2025年も残りわずかということで、いくつかブログを書いておこうと思います。
2025年を振り返ると、5月のギタリスト「Dr.K」こと徳武弘文さんの訃報は、私にとって大きなものでした。
 私が徳武さんのお名前を意識するようになったのは、1990年に徳武さんの演奏によるインストゥルメンタル曲『KEITH』がCM音楽として使われ、雑誌『ギター・マガジン』に掲載された『KEITH』に関する記事を読んだのが初めてだったと思います。
 私はちょうどそのころからムーンライダーズやその周辺の音楽をよく聴くようになり、自然と徳武さんの演奏に触れる機会も多くなりました。
 そして徳武さんが高橋幸宏さんのコンサートに参加することで、ライブでも徳武さんの演奏を観る機会も出てきました。
 また、『ギター・マガジン』誌面などでの徳武さんのインタビューやコラムから自分が知らなかったジャンルの音楽について知ることも多かったですし、ライブに行くまでではなかったものの、徳武さんのギターインストでの活動も、興味深く見ていました。

 一方で私は2000年ごろからモーニング娘。はじめハロー!プロジェクトに興味を持つようになっていくわけですが、徳武さんは同じ音楽の世界であってもハロプロとは縁のない存在だとずっと思っていまして、同じくムーンライダーズや幸宏さんファンでハロプロ好きでもある知人と「徳武さん、ハロプロ関係でも弾いてくれないですかね」みたいな話を、あくまで「冗談として」していたものでした。
 それだけに、2006年に開催された安倍なつみさんのアコースティック・ライブに参加したのを皮切りに、徳武さんが安倍さんやほかのハロプロOGのライブにたびたび参加するようになったのは、大きな驚きでした。
 自分の中で、遠く離れたところに位置づけていたものを繋いでくれた、徳武弘文さんは私にとってそんな存在でもありました。
 1992年に東京厚生年金会館でおこなわれた高橋幸宏さん、鈴木慶一さん、山本耀司さんのコンサート『BEATNIK'92 Against All Risks ON BEAT THE GENERATION』にバンドメンバーとして参加する徳武さんを観て、それから15年後の2007年に同じ厚生年金会館で安倍なつみさんのコンサート『安倍なつみSpecial Live 2007 秋 〜Acoustic なっち〜』にゲストとして出演する徳武さんを観たという経験は、それを象徴するような、ちょっと面白い体験だったと思っています。

 もうひとつ、徳武さんについて忘れられない記憶があります。
 1992年ごろだったと思いますが、池袋のイシバシ楽器(現在の池袋店店舗とは別の場所でした)で開催された徳武さんのギターセミナーを観に行きました。
 その際にQ&Aコーナーで徳武さんがメインで使われていたテレキャスター仕様に改造されたフェンダー・エスクワイアーについて質問された方がいました。ピックアップをEMG製のものに交換しているのはなぜですか、というような質問だったと思います。
 その質問への徳武さんの答えは「仕事で使うギターだからです」といったものでした。「ぼくたちは、どんなに自分で音が気に入っているギターがあっても、現場でエンジニアからSN比が悪いと言われたら、そのギターは使えないんです(そのためにノイズの少ないEMGに換えてある)」というようなお話を徳武さんがされたのが、とても印象的でした。
 「プロ」として仕事をしている人には、自分の好みなどよりも優先するべきことがあるのだということをその徳武さんのお話から感じましたし、現在に至るまで私自身の物事の考え方はその徳武さんのお話に大きな影響を受けていると思います。

 「Dr.K(ドクターケー)という愛称は、名字の徳武(とくたけ)が由来とのことですが、眼鏡をかけ穏やかな佇まいでギターを弾く、その姿も「ドクター」の名に似合うものだったと思っています。
 演奏だけでなく、残してくださったたくさんのものに改めて感謝です。

 『ギター・マガジン』2025年10月号には特集のひとつとして、徳武さんの追悼特集が掲載されました。膨大な数が掲載された参加作品のリストは圧巻で、聴いてない作品をリストを頼りに聴くのも楽しみです。
 同特集では、近年のメインであったフェンダージャパンのDr.Kモデルや長くメインとして使われたフェンダー・エスクワイアーはもちろん、セッションギタリストとしては異色とも言える使用楽器の数々が紹介されており、楽器選びの面でも徳武さんの唯一無二さんを感じます。
 記事には紹介されていませんが、1990年代によく使用されていたG&LのASAT CLASSICや、1997年に九段会館でおこなわれた『METROTRON WORKS 10th ANIVERSAL』に出演された際に使われていたチャンドラーのテレキャスタータイプのギターも、徳武さんの使用楽器では印象深いです。
 『ギター・マガジン』2025年10月号は、電子書籍で現在でも購入できるようです。

www.rittor-music.co.jp

 最後に、前述の『ギター・マガジン』の作品リストには未掲載だった、個人的に印象的な徳武さんの参加作品を挙げておきます。
 久保田洋司さんの1992年のアルバム『Blue Marbles』。ムーンライダーズの岡田徹さんプロデュースによる打ち込み主体のエレクトリックなポップサウンドの中に徳武さんによるギターサウンドが見事に融合しています。徳武さんはギターのほかバリトンギターも演奏しており、90年代にいくつかあった打ち込み主体のサウンドに徳武さんのプレイを取り入れた作品の中では、もっとも成功している作品のひとつではないかと思います。

 さて、お名前で気がついた方もいらっしゃるかもしれませんが、久保田洋司さんはこのアルバムリリースの数年後から作詞家としての活動も多くなり、ハロプロ周辺にもいくつか歌詞を提供しています。安倍なつみさんの『息を重ねましょう』も、久保田さんの作詞です。
 徳武さんは安倍なつみさんのライブに参加して何度か『息を重ねましょう』を演奏しており、このアルバムの10数年後におふたりが別のかたちで関わっていたというのも、面白いご縁だなと思います。

ハロプロ楽曲大賞'25

今年もハロプロ楽曲大賞に投票しました。

以下に私の頭皮ょ内容を記載します。

私は年の最後にその年に自分の中で印象に残った曲を振り返る機会としてこの企画に参加しています。

今年は点数はすべて同点としています。

(※12月13日に動画を追加しました)

 

楽曲部門

『初恋の亡霊』Juice=Juice

本来はスケール外となる長三度の音を使ったサビのメロディが印象的です。それによってマイナースケールの切なさを感じさせるメロディが一瞬メジャースケールの明るさを帯び、叶わなかった初恋が、ただ苦く哀しいだけの記憶ではなく、幸せな時間の記憶でもあることがメロディによって表現されているように思えます。ラストで段原さんと井上さんが同じフレーズを違った歌い方で繰り返すのも、ひとりの中にある強さと弱さや初恋の記憶へのアンビヴァレンツを示しているよう。楽曲とメンバーの歌唱がひとつの世界を強固に作り上げているように感じました。2番と間奏明けでサビがユニゾンでなくメンバーそれぞれにソロになっているのも好きなところです。
 

『Alright』佐藤優樹

最初に声とメロディだけがある。そこに別の声が重なり、ハーモニーとリズムが生まれる。この曲のあり方そのものが「歌」というもののひとつの本質を表現しているように感じました。また、ほぼ声とピアノの音だけで構成されているところが、佐藤優樹さんにとっての音楽の核となるものを示しているようにも思えます。
 

『悲しみがとまらない』つばきファクトリー

カヴァー曲ですが、予想以上につばきに合っている印象を受けました。友達に恋人を奪われるという歌詞の内容が、つばきがこれまで歌ってきた曲の持つ湿度と通じるのかもしれません。アレンジはかなり原曲に忠実ですが、にもかかわらず特にAメロなど原曲と比べて縦のビートよりも横のグルーヴを感じさせるサウンドになっているところが興味深かったです。
 
 

『ワタシ・プレミアム』GOODM!X PREMIUM

1番、2番、3番でガラッと変わる曲の雰囲気。特に2番でのダークな変化を、調号が変化する転調を使わずに実現しているところに面白さを感じました。サビの歌い出しのメロディは、明るい1番と3番では「レ・ミ・ソ・レ・ミ・シ」なところ、ダークな2番では「ミ・#ファ・ソ・ミ・ソ・シ」となり、1音移動させることで平行調であるEマイナーを強く感じさせているところが興味深かったです。
 

『未来ハジマリ』ロージークロニクル

“揺れる煙 猫の形だ”のフレーズになにか泣けてしまいました。なんでもない風景の中にさまざまな思いを描き出すことができる、そんな時期を短い言葉で言い表したような、そんなフレーズに。
(※動画はリリース以前に公開されたライブ映像を貼っています)
 

MV部門

『明るく良い子』モーニング娘。'25

メンバーのカラフルな衣裳や円になることが多い振り付けを万華鏡に見立てた構成を面白く感じました。Aメロの屋外撮影のカットでは奥から手前への前後方向の移動を多用しているのも印象的です。

『星屑のエスケープ』稲場愛香

4:3サイズのフレームやブラウン管画面のようなエフェクト、1980年代の「プロモーションビデオ」を思わせるようなイメージカット、ロトスコープを模したようなエフェクトなど、1980年代を意識したような演出がサウンドのコンセプトと一致しているところが気に入っています。
 

『悲しみがとまらない』つばきファクトリー

シンプルな構成のミュージックビデオですが、メンバーひとりひとりのソロカットのよさによってしっかりと世界が作られていると思います。ひじょうに浅い被写界深度や小物の使用も効果的だと思いますし、なによりメンバーそれぞれが見せる「物憂げ」な表情がいい。視線をカメラに向けたカットと視線を向けないカットの使い分けも良いと思います。ラストの砂時計のカットは、歌にミュージックビデオ独自の解釈を加えるもので評価が分かれるところかもしれませんが、私はミュージックビデオのあり方として「あり」かなと感じています。
 
 

YouTube部門

『日本の有名作曲家が突然K-POPを学び出した理由 【ハロプロ作曲家 星部ショウさんコラボ!】』(カムソンサウンド・星部ショウコラボ)

現役の職業作家がなぜ改めて学ぶのかという、その理由や背景が興味深かったです。機材の話や、日本と韓国の音楽制作環境の違いなどにも触れられているのも面白かったです。
 

『練習用機材大公開!』(宮本佳林チャンネル)

2.0pts. もともとミュージシャンなどの機材紹介を見るのが好きだったので、宮本さんがそれをやってくれたのがありがたかったです。観ながら「あー、宮本さんがこれをサウンドハウスで買ってたら面白いなあ」とか思ってたらほんとに宮本さんの口から「サウンドハウス」と出てきて夜中に声を出して笑ってしまいました。
 

『【LIVE映像】宮本佳林「氷点下」@宮本佳林 LIVE 2024~TWiNKLE~(12.29 Zepp DiverCity)』

実際には鑑賞していないライブの映像ですが、見入ってしまいました。アップのカットも見られる映像だからこそ、メイクや表情での宮本さんの表現も見ることができて、よりこの曲で宮本さんが魅せようとした世界を堪能できた気がしています。
 

『【M-line Music#176】「We are the M-line!!」&「ダンスパフォーマンス」/ツアー日記/保田圭「NIGHT OF TOKYO CITY」 MC 稲場愛香・森戸知沙希』

カジュアルディナーショーでの保田圭さんソロ曲を1曲フルで聴かせてくれたところで外せないです。

『アンジュルム『RED LINE』 ~2025 HALLOWEEN Ver. ~』

ハロウィン仕様になったアンジュルム公式サイトに埋め込む用に作られた動画で、公開当初はYouTube側では検索しても表示されないよう限定公開に設定してあったのもYouTubeの仕様をしっかり把握していて見事でした。「遊びを本気でやる感」に拍手。
 

ハロプロとフェルナンデス

今年2024年、楽器業界の大きなトピックとして、日本のギターブランド・FERNANDESの製造・販売をおこなっていた株式会社フェルナンデスの事業停止・自己破産という出来事がありました。リンクはIT media NEWSの記事です。

www.itmedia.co.jp

フェルナンデスといえば、1980年代後半から90年代にかけて、当時の音楽シーンにマッチした(当時としては)先進的な仕様や、人気アーティストとのエンドース契約、アンプ内蔵の小型ギター・ZO-3(ぞーさん)の大ヒットなどもあり、まさに国内ギターブランドを代表するブランドであったと思います。
往時の人気を知っていrと破産は意外にも思えますが、ここ10数年、むしろトラディショナルな楽器に回帰する傾向が進んでいること、フェンダーやギブソンと言った海外ブランドが日本のアーティストとも積極的に契約する戦略を進めていることなどが、フェルナンデスンは逆風になっていたのかもしれません。

 

で、ですね。実はそのフェルナンデスはハロプロとけっこう深い縁のあるブランドだったのかもしれない、という話。

 

ハロプロ楽曲の制作に携わるディレクター陣のひとりであり、ギタリストとして楽曲に参加することもある鎌田こーじ(鎌田浩二)氏は、フェルナンデスユーザーです。
下の動画は、2003年にSHIBUYA-AXで開催された『つんく♂ファン感謝祭2003』のライブ映像で、バックバンドのギタリストとして参加しているこーじ氏がフェルナンデスのギターを使っているのが確認できます。


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このライブでこーじ氏が使っているのは、テレキャスタータイプのボディと、コンコルドヘッドと呼ばれる鋭角的なヘッドの組み合わせの、フェルナンデスを代表するギターともいえる「布袋モデル」に近いスタイルのギターです。


田中れいなさんがモーニング娘。に在籍中だった2010年8月のブログには、レコーディングスタジオと思われる場所で田中さんがこのギターと同一と思しきギターを持っている写真が掲載されており、このギターが娘。楽曲の制作現場にあったことがうかがえます。

ameblo.jp


そして、このブログの写真を見ると、このギターにはフェルナンデスの開発した「サスティナー」という機構が搭載されていることがわかります。
サスティナーというのは、ギターに内蔵した電池を使用して弦を振動させ持続する(=Sustain)音を出すもので、これを搭載したギターには通常のギターにはないサスティナー用のスイッチが追加されます。こーじ氏のギターには、このスイッチがあるのが上記の写真で確認できます。
過去のフェルナンデスのカタログなどを確認すると、布袋モデルである「TE-HT」シリーズや、ほぼ同じシェイプの「TEJ」sリーズで、テレキャスターシェイプにコンコルドヘッドでサスティナー搭載した、こーじ氏のギターに近い仕様のギターが市販されており、こーじ氏のギターはこれらをベースにしたカスタムモデルかもしれません。

じゃあそのサスティナーってどんな音がするかというのは、デモ演奏の動画を見るとわかりやすいかと思います。動画は次世代モデルであるサスティナー2の動画なのですが、オリジナルのサスティナーでも近い効果が得られます。


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さて、娘。の2011年リリースの楽曲『ONLY YOU』。この間奏のギターソロ(動画4分20秒〜30秒あたり)の最後とか、サスティナーを使ったプレイではないでしょうか?


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ほかにも、娘。2009年のアルバム『プラチナ9DISC』収録の『私の魅力に 気付かない鈍感な人』『It's You』なんかもサスティナーを使ったのではないかと思われるプレイが聴かれ、これらの曲はフェルナンデスのギターを使ってレコーディングした可能性が高いと思います。

11月にリリースされたばかりのモーニング娘。'24の最新アルバム『Professionals-17th』にも、鎌田こーじ氏は数曲でギターを演奏しています。もしかしたら、この最新アルバムのレコーディングにも、フェルナンデスのギターが使われてるのかもしれません。

 

こーじ氏以外のプレイでは、BEYOOOOONDS『ニッポンノD・N・A!』のレコーディングで、朝井泰生氏がフェルナンデスのギターでギターソロをレコーディングしているのが、YouTube配信番組『アプカミ』のレコーディング映像で確認できます。


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ハロプロ楽曲にもその音色を残しているフェルナンデス。会社としては事業を停止しましたが、その技術やこれまで積み重ねてきた歴史が、なんらかのかたちで継承されていくことを願っています。

ハロプロ楽曲大賞'24

今年もハロプロ楽曲大賞に投票しました。
以下に私の投票内容を書いておきます。
(※日付は12月9日になっていますが、実際に内容を更新したのは12月31日です)
 

楽曲部門

『トウキョウ・ブラー』Juice=Juice


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往年のシティ・ポップの名曲を何曲もカヴァーしてきたJuice=Juiceが、オリジナル曲でシティ・ポップ路線に挑んだ曲……と思わせつつBメロでの予想外の展開に驚かされました。シティ・ポップのテイストと現代的なダンスミュージックの融合が面白いです。サウンドだシティ・ポップを意識しているのはもちろですが、歌詞もかつての「都会的」なフレーバーを散りばめて「あのころ感」を漂わせているのが見事です。
 

『レインステーション』宮本佳林

「1、(ワン)」「2、(ツー)」のフレーズに続いて「三叉路」(2番では「午前3時」)という言葉が出てくる「数字の遊び」みたいな歌詞が引っかかりを生んで曲の世界にいっそう引き込まれました。1番では「100億年ぶり」、2番では「1/100も」と、対になるようにやはり数字を使っているのも印象に残りました。
「キミは来ない(Say good-bye…)」「皮肉なくらい ツラい未来」「もしくるなら 悔やむんかしら」などの脚韻の効果的な使用とそれによってより引き立てられる哀愁も好きな部分です。
 

『花鳥風月 春夏秋冬』佐藤優樹


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エッジの効いた歪んだギターサウンドとデジタルビートが生む疾走感と、変わりゆく心情をやや古風な言葉で綴った歌詞が生む、やや硬質な切なさが刺さる曲でした。間奏のギターフレーズにオルガンが重なっていくところなど「こうじゃなきゃ!」みたいなカッコよさがあって素晴らしいです。
 

『勇敢なダンス』モーニング娘。'24


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シンセサウンドをメインとしつつも(おそらくサンプリングの)ギターのカッティングサウンドも相まって、エレクトリックでありながらエモーショナルな「熱さ」を持ったビート感が心地よかったです。そんなサウンドとドラマティックなメロディ、内心の葛藤も感じさせる歌詞が、抑えられない感情の激しさを曲として伝えるようです。
 

『内緒だよ』モーニング娘。'24 [小田さくら、羽賀朱音]

おそらく通常のレコーディングの際より小さな声で、マイクに近づいて囁くように歌ったのではないかと思われるような声が生むくすぐったさと、その声だからこそ伝えられる「心地よい関係への想い」。レコーディングされた音源だからこそ表現できる情感を感じた1曲です。
 
 

MV部門

『Good Luckの胸騒ぎ』OCHA NORMA


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1番2番はワンコーラス分をワンカットで通し全体でも4カットと、最長1分半の長回しが印象的なビデオクリップ。1番・2番のAメロBメロではカメラの早い横振りを多用してカットを割らずにスピード感を出し、サビではゆっくりとした移動で見せることで変化をつけているのが巧みな見せ方だと思います。間奏後のサビであえて画面にひとりだけがいる構図にして「一人でいちゃ始まんない」の歌詞に合わせるように全員が揃ったカットに切り替える演出も見事です。
 

『花鳥風月 春夏秋冬』佐藤優樹

比較的シンプルな構成のミュージックビデオではありますが、色彩の配置とそれを引き立てるようなカラーコレクションによってすべてのカットがグラビア過写真集の1ページを見ているよう。見入ってしまう映像でした。
 

『勇敢なダンス』モーニング娘。'24

舞台で踊るメンバーをさまざまな角度から捉えたショットをメインにすることで「ステージで踊ることが私(たち)の感情の発露である」ことを表現したような映像に引き込まれました。2番冒頭、リレーされていくソロパートをワンカットで追ったカットが好きな部分。「ともに踊ることでの会話」のような終盤のカットは圧巻です。 
 

推しメン部門

保田圭

昨年の夏ハロコンや娘。横浜アリーナコンサートへのゲスト出演に続き、今年は久々のカジュアルディナーショー開催もあり、歌を聞ける機会があったのは嬉しいところでした。そしてその機会やSNS・ブログなどを通して変わらぬ「歌う姿勢」を感じられました。今後の活動も、変わらず楽しみにしています。 
 

感想みたいなもの

楽曲部門、MV部門とも、得点はすべて同一の2点で、順位は付けずリリース順に記載しています。
今年は個人的な事情で夏以降慌ただしい日々を送っており、特にハロプロ楽曲大賞投票期間がまさに忙しさのピークであったため、投票に時間を割けなかったという事情がありました。
そのためYouTube部門は投票せず、コメントも簡単なものとしています。MV部門『Good Luckの胸騒ぎ』だけコメントが長いのは、MV公開時にあらかじめ書いていたものだからです。
そんな理由もあり個人的にはちょっと消化不良感のあった今回の投票でしたが、楽曲選考自体は仮に時間を掛けていても同じ結果になったのではと考えています。
来年も、たくさんの魅力的な楽曲に出会えることを期待しています。

あの素晴しい愛をもう一度〜2024Ver.

 「トノバン」の愛称で親しまれた音楽家・加藤和彦さんのドキュメンタリー映画『トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代』が、5月31日に公開されます。
 以前にこのブログで感想を書いた音楽ドキュメンタリー『音響ハウス Melody-Go-Round』と同じく相原裕美監督の作品ということで、公開をとても楽しみにしています。

tonoban-movie.jp

 この映画のために高野寛さんらによるトリビュートバンド「Team Tonoban」が加藤和彦さんの名曲を新たにレコーディングした『あの素晴しい愛をもう一度〜2024Ver.』が、映画公開に先駆けて配信されています。


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 YouTubeで公開されているミュージックビデオは間奏まででフェイドアウトしていますが、音楽サブスクリプションサービスで配信されている音源では、フルに聴くことができます。

umj.lnk.to 最初、参加アーティストのクレジットをきちんと見ないまま曲を聴いて、間奏明けで衝撃を受けました。そこで歌われている歌詞のように「涙が知らずにあふれてくる」ような感覚を覚えました。
 時間や、空間や、もっと大きなものすら越えて、いまここにいる人たちと、ここにはいない人が、ひとつの作品の中で同時に存在することができる。それが録音作品であるということを、改めて感じさせられました。

 

 音楽ソフト産業が縮小する中で「ライブこそが音楽」という認識が強くなっているような気がします。
 しかし、ライブでしか体験できない音楽の魅力があるように、レコーディングされた作品でしかあり得ない魅力というのも、同様にあると思っています。
 そんな録音作品の魅力を、これからも大事にしたいと思います。

 

 

LOLOETについて

 和田彩花さんが結成し昨年10月に始動したバンド・LOLOET(ロロエ)、私はまだライブを観に行けていないのですが、ありがたいことにバンドの公式YouTubeチャンネルでライブ映像が公開され、ライブ演奏に触れることができました。
 この記事を書いている5月6日の時点で、2月6日におこなわれた高円寺HIGHでのライブから5曲の映像が公開されています。


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 ライブ映像で感じるのは、一般的なポップミュージックとは明らかに異なる感触。多くの曲で一曲の中で曲調が大きく変化しているのは、いくつもの音源をコラージュして構築した録音楽曲を生で再現してるようにも感じ、あえてライブ的でない楽曲をライブで演奏する実験的な演奏のようにも感じます。

 そして、空間を意識させる演奏だという感覚も覚えます。
 ベースの弓弾きやエフェクターをかけたエレキギター、トランペットのロングトーンといった、長く持続する音が印象に残ります。
 またギターにかけられたディレイや、ドラム、トランペットに深くかけられたリヴァーブも、やはり印象に残ります。
 それらの持続する音や、反響と残響を伴った音が、緩やかに空間を埋めていくようなイメージ。
 LOLOETの演奏は、客席が一体となって拳を突き上げたり、一緒に声を上げて歌うようなものではないけれど、ライブハウスという空間でなければ味わえない魅力を持っているものだと、映像を通しても感じさせられます。

 LOLOETはライブ活動が重要なバンドだというのは、別の面からも感じます。
 ライブ会場などで販売されているグッズのTシャツは、古着のTシャツにメンバー自身がシルクスクリーンでロゴを印刷したもの。3月にリリースされた初の音源はカセットテープ。
 四半世紀以上前であれば、メンバー手作りのグッズやカセットテープの音源は、おそらくバンドがグッズや音源リリースを考えた場合に一番手軽に選べる手段であったかもしれません。
 しかしいまは、スマートフォンからでも世界に向けて音源を発信することが可能で、グッズもネット経由で容易に作成ができる時代。
 そんな時代に、あえてメンバー制作のTシャツ、カセットテープでの音源で、さらにTシャツは古着を利用、カセットテープも再生プラスティックを使用と、SDGsを意識したメッセージも見えてきます。
 グッズ制作や音源リリースというバンド活動自体が、楽曲と同様にLOLOETの表現であるように思えます。
 だとすれば、ライブというバンド活動の場に身を置くことで、観客もLOLOETの表現に参加し、作品の一分となることができるのではないか。
 それはきっとLOLOETのライブが持つ特別な魅力ではないかと思います。
 率直に書けば、自分がLOLOETのライブを楽しめるかどうか、わからないというのが正直なところです。でも、LOLOETというバンドはライブを観ることに意味のあるバンドなのだろうと考えています。
 ここ数年ライブハウスから足が遠のいている上に、COVID-19流行の数年を経て腰の重さが増しに増している私なのですが、LOLOETのライブは近いうちに体験してみたいと思っています。

 最後に、もうひとつ。
 LOLOET公式YouTubeチャンネルで現時点での最新の動画『Le bouquet vert』のライブ映像が公開された3月25日には、笠原桃奈さんが在籍するME:Iのデビュー曲『Click』のミュ0ジックビデオも公開されました。
 多くの人に受け入れられるものを目指し、それをひじょうに高いレベルで実現してるME:I。
  いわゆる「ポップなもの」からは、何歩も離れた場所を選んでいるLOLOET。
 かつて同じアンジュルムというグループで同時期に活動していたことのあるふたりが、それぞれのグループでそれぞれの表現をしていて、その作品が同じ日にYouTubeで公開されたことを、私はとても面白く、刺激的に感じています。


www.youtube.com

 

 

「懐かしい」じゃない11月28日

気がつけばもう1ヶ月以上経ってしまいましたが、11月28日に開催されたモーニング娘。'23のコンサート『「Neverending Shine Show」 SPECIAL』について書いておこううと思います。

 

娘。'23秋ツアーを締めくくる2日連続の横浜アリーナん公演の1日目のこのコンサート、私はライブビューイングで鑑賞しました。

開催発表時からOGメンバーの出演が予告されていたこの公演。私としては、保田圭さんの出演を楽しみにしていて、この文章もほぼ保田さんについてだけ書いていますのであしからず。

 

さて、OG出演パートのトップを飾ったのは安倍なつみさん。流れてきた『トウモコロシと空と風』のイントロに、安倍さんはこの曲か! と、では保田さんの曲はなんだろう? と期待も膨らみます。

そして続いて流れてきたのは、聴き馴染みのあるあのイントロ。そう『シャボン玉』! 田中れいなさん、高橋愛さん、道重さゆみさんと、オリジナルのメンバーでの歌い出しにちょっと感慨も覚えつつスクリーンを観ていると……あれ?

 

保田さんがいる?

 

ご承知のように、保田さんがモーニング娘。を卒業したのは2003年の5月5日。『シャボン玉』は、2003年7月30日にリリースされた、保田さん卒業後の曲。つまり、保田さんは娘。在籍時にこの曲を歌ったことはないわけです。

正直ライブビューイング当日は「保田さんがいる!」という驚きが先に立ってしまっていたので、後日、YouTube番組『ハロ!ステ』で配信されたライブ映像で改めてそのパフォーマンスを堪能しました。(リンクは『シャボン玉』ライブ部分に時間指定しています)

youtu.be

保田さんは、今回のコンサートに参加していないOGメンバーのソロパート数人分を一手に引き受けていて、田中さんに次いで目立つくらいの活躍ぶり。6期メンバーが本格的に活動を開始する前に保田さんが卒業しているため娘。では実現しなかった、保田さんのソロのあとに田中さんのソロが観られるのも嬉しいところです。

それから、最近テレビ番組やライブイベントなどで保田さんが歌うのを観て、声や歌い方がソフトな感じになったかなと思っていたのですが、
曲調に合わせていただけだったんですね(笑)。激しく野性味あふれる保田さんも健在なりと思わされました。

 

この曲に続いての『晴れ 雨 のち スキ ♡』も素晴らしかったです。

もーんング娘。さくら組のこの曲も、保田さん卒業後の曲です。

さくら組、おとめ組の組分け自体が保田さん卒業後におこなわれたわけですが、私の中では、もしさくら・おとめ分割時に保田さんが在籍していたとしたら、おとめ組かなというのがありました。それは、当時の保田さんのイメージであったり、2期メンバーふたりが同じユニットになることはないだろうという理由からです。

なので、保田さんが安倍さんや矢口さん、髙橋さんと並んで『晴れ 雨 のち スキ ♡』を歌疎いのは、この20年間想像することすらありませんでした。

でもそれが目の前のスクリーンで繰り広げられていて、保田さんがすごくこの曲に合っている! 保田さんが歌うサビを聴いたときは、私にとっては娘。25周年のアニバーサリーってこの瞬間のためにあったんだなと思いました。

 

今回の公演でのOGによるパフォーマンスを「懐かしい」と受け取るか方は多いと思います。

でも、私にとっては「懐かしい」ものではありませんでした。保田さんが、娘。在籍時には歌ったことのない(「シャボン玉』はドリームモーニング娘。のツアーで歌ったことがありましたが)曲を歌う「新しい」ものなんです。

それは、この日の公演での保田さんに限ったことではなくて、9月に国立競技場代々木第一体育館で開催された『Hello! Project 25th ANNIVERSARY CONCERT「ALL FOR ONE & ONE FOR ALL!」』でも、市井紗耶香さんが娘。在籍時に歌ったことのない『恋愛レボリューション21』に参加したり、辻希美さんと紺野あさ美さんが2期タンポポの『恋をしちゃいました!』に参加したり、OGによる当時の再現ではなくて、OGによる「現在の新しいパフォーマンス」を見せてくれたのが2023年の25周年アニバーサリーだと思っています。

すごく楽しくて、刺激的で、私にとって11月28日の横浜アリーナ公演はそれを象徴する公演でした。

その素晴らしい公演を、ライブビューイングですがリアルタイムで観ることができて本当に良かったです。

 

もうすぐ2023年も終わり。やってくる2024年も、そんな楽しくて刺激がある1年になるといいなと思っています。みなさまよいお年を。(って書いてるうちに年を越しちゃったけど)