娘。 with Squier

 エレクトリックギター、エレクトリックベースの代表的メーカーであるFenderの日本版公式サイトの企画「Start with Squier」Vol.11Vol.12モーニング娘。佐藤優樹さんと横山玲奈さんが登場、Fenderのビギナー向けブランド・Squierのギターを抱えたグラビアとインタビューが前編・後編の2回にわたって掲載されました。

 

 2017年に開催された展示イベント「モーニング娘。museum ―モーニング娘。誕生20周年記念―」で当時のメンバーひとりひとりが娘。の曲から20曲を選ぶという「マイベスト20曲」という企画があって、その際に佐藤優樹さんはそのうち5曲をギターが好きという理由で挙げていました。

f:id:KKT:20201230172656j:plain
f:id:KKT:20201230172757j:plain
私が撮影した同展示の写真。念の為、このコーナーは撮影可でした

  私はこの展示を見たときから佐藤さんがギターという楽器をどう捉えているかが気になっていたので、佐藤さんがギターについて語っている今回のインタビュー(佐藤さんは後編)はありがたかったです。

 

 同時に、このインタビューを読むと、佐藤さんにとって担当のレコーディングディレクターさん=娘。はじめハロプロの楽曲でギターを弾いていることも多い鎌田浩二(こーじ)氏の存在が大きいことを改めて感じます。

 

 

 こちらは、そのこーじ氏のギタリストとしての姿が見られるライブ映像。


つんく♂ / 見ておくれ!MY LOVERS(2004.03 Live at Zepp Tokyo)

 このライブ映像でこーじ氏はおそらくフェルナンデス製と思われるテレキャスタータイプのギターを使用。また過去の田中れいなさんのブログではやはりフェルナンデス製でコンコルドヘッドの、いわゆる布袋モデルに近い仕様と思しきテレキャスタータイプのギターの写真が掲載されています。

ameblo.jp 今回の「Start with Squier」の写真でふたりが持っているギターは、佐藤さんがテレキャスター、横山さんがストラトキャスター。それぞれのギター選びに本人の意向が入っているかどうかはわかりませんが、佐藤さんがテレキャスターを持っているのはテレキャスタイプのギターを愛用するこーじ氏に合わせたのかな、もしかすると佐藤さんが実際に所有するギターもテレキャスタイプなのかななどと、想像が膨らむところです。

 

 

 ちなみに、私が勝手に佐藤さんでイメージするギターはFenderジャガー

 佐藤さんと同じくドラムとピアノをこなすミュージシャンの鈴木祥子さんがギターを弾くときに愛用しているのがジャガーだという連想が理由のひとつ。


鈴木祥子『SUZUKI SYOKO with JACK-TATI & KAWAI SHINOBU LIVE AT GB』 ダイジェスト版

 もうひとつの理由は、ザ・スミスでの活動で知られるイギリスのギタリスト、ジョニー・マーが近年ジャガーを愛用しているので「マー」つながりでという連想です(笑)。

 で、ジョニー・マー本人が使用するジャガーのうち何本かには、市販のジョニー・マーモデルには搭載されていないサスティナーという機材が搭載されているのですが、サスティナーはこーじ氏のギターにも搭載されてたりします(田中さんブログの写真で確認できます)。娘。『Only you』『私の魅力に 気付かない鈍感な人』『It's You』なんかのギタープレイはサスティナーを使っているんじゃないかな。


Johnny Marr - Hi Hello (Live on KEXP)

 3:47あたりからサスティナーを使ったプレイ。

 

 いつかエメラルドグリーンのジャガーを持った佐藤優樹さんが見たいぜ!

 

ハロプロ楽曲大賞'20

 今年もハロプロ楽曲大賞に参加しました。私の投票内容とコメントをここにも記載しておきます。(記事の日付は12月23日になっていますが実際に内容・コメント、全体的な感想を追記したのは12月29日です)

楽曲部門

『意識高い乙女のジレンマ』つばきファクトリー


つばきファクトリー『意識高い乙女のジレンマ』(Camellia Factory [The dilemma of a girl who’s self-aware.])(Promotion Edit)

2.0

無機質にも感じるサウンドに乗った少し気だるげな独白から始まり、徐々に高まりを見せる「葛藤」。その葛藤の内容がアイドルの楽曲としてはわりと珍しく思えるものだったり、サウンドも歌詞も含めた楽曲全体のちょっと不思議な雰囲気に惹きつけられました。発音しにくいために普通なら歌詞では避けそうな「取捨選択」という言葉を使っていたり、本来の言葉の順序を入れ替えてあえて不自然にしたような「恋を知らなきゃ 愛はできない」という一節など、歌詞がちょっと癖のある感じになっているところも好きですし、やはり歌詞の面で「なんて」と「ナンセンス」「ナッシング」の押韻の気持ちよさもすごく好きです。


『KOKORO&KARADA』モーニング娘。'20


モーニング娘。'20『KOKORO&KARADA』(Morning Musume。’20 [Minds & Bodies])(Promotion Edit)

2.0

あえて音の隙間を感じさせるようなサウンドと、Bメロでふたつの異なるメロディ・歌詞が同時に歌われ(KOKOROとKARADAを象徴するかのように)ひとつに融合していくところなどが好きなところです。そしてサビの「君が好きさ」は、サ行の持つ摩擦感がこのフレーズを音として強く耳に残し、様々な感情を経て帰着したシンプルなメッセージを際立たせていると思います。

 

『空を遮る首都高速和田彩花


【和田彩花】空を遮る首都高速 【MUSIC ONLY】

2.0

リズムパートやシーケンスフレーズのシンセサウンドと、ピアノやストリングス、シェイカーといった生楽器系のサウンドの融合が心地いいです。パートによってベースサウンドの有無を巧みに使っているのも好きなところ。歌詞にはあまりポップミュージックでは使われないような言葉も使われ、ただ気持ちよく流れていくだけではない引っかかりのある作品になっているのも魅力です。

 

『Yellow Butterfly』吉川友


吉川友 - Yellow Butterfly -
2.0

吉川友さんは曲によっては曲を提供するクリエイターの色を強く感じることもあったのですが、この曲ではナチュラルな吉川さんを感じました。本人が初めて手がけたという歌詞は、「冷や汗」と「幸せ」、「雑踏」と「颯爽」「葛藤」と、響きの似た言葉を重ねるテクニックも見事。いままでの道のりを振り返るような歌詞にデビュー曲のフレーズも用いて「これまでとこれから」を前向きに感じせる爽快感が気に入った部分です。


『抱きしめられてみたい』つばきファクトリー


つばきファクトリー『抱きしめられてみたい』(Camellia Factory [“I want to be hugged.”])(Promotion Edit)

2.0

「きみ」との関係に感じる漠然とした不安を歌った1曲……と思いきや、曲の最後にその不安の具体的な理由を明かすという、ちょっとトリッキーな仕掛けにドキリとさせられました。もちろんその仕掛けだけでなく、情景描写から感情へと移っていく歌詞の構成や、不安定な心を象徴するようなサビの半音の音使いも好きなところです。

 

MV部門

『意識高い乙女のジレンマ 』つばきファクトリー

3.0

冒頭からさまざまなかたちで提示される「円」のモチーフ。間奏でその「円」のひとつであるシャボン玉がサウンドに合わせて弾けるカットにやられました。画面のサイズが現在では一般的でない4:3のスタンダードサイズなのも、個人的に昔観たフィルム撮影のアート作品を思い出して魅力を感じた点です。途中で映る時計の針がつばきファクトリーの結成日やこの曲のリリース日を指しているという細かな仕掛けも好きなところ。


『あなたが選んだもの、あなたが選ぶもの』和田彩花


【和田彩花】あなたが選んだもの、あなたが選ぶもの 【MUSIC VIDEO】

2.0

3分10秒あたりから、映像中の人物たちが顔を上げるのに合わせて画面の上下幅が広がっていくという、映像のフォーマットを表現手段として使う手法を面白く感じました。映像の中で冒頭からずっと左から右へと歩いていた和田さんが、最後に振り向き右から左へと数歩歩むのも印象的でした。歌詞の内容をイメージ的に表現し、余地や余白の多いところが魅力的に感じたミュージックビデオです。

 

『ホットラテ Hot latte』和田彩花


和田彩花 - ホットラテ Hot latte 【MV】

1.0

本人の顔も姿も一切登場したいのですが、間違いなく映像に和田彩花さん自身を感じるように思いました。見ていると特にラテの映像に引き込まれ、繰り返し見たくなります。「アイドル」のミュージックビデオとしてひとつの可能性を示してくれたように感じています。


YouTube部門

井上玲音がJuice=Juiceの歌を・・・」#08


「井上玲音がJuice=Juiceの歌を・・・」#08

3.0

リリースされたバージョンのアレンジを感じさせつつ、ギターをメインにしてソリッドになったアレンジがとにかく好きです。ナチュラルに歪んだギターの音やBメロでかけられたトレモロがたまらない。映像も、それぞれのソロショットではふたりが向かい合わせとなっている構図を連想させつつ、実際に一緒に映るショットでは視線が交錯しない背中合わせの位置という演出、全体の色調なども気に入っています。


 「井上玲音がJuice=Juiceの歌を・・・」#01


「井上玲音がJuice=Juiceの歌を・・・」#01

2.5

歌声はもちろん、ヴィンテージのローズ・ピアノのサウンドが堪能できるという点でも好きな映像です。ちょっとドキュメンタリー的な雰囲気もあり「Juice=Juiceの井上玲音」への期待感を高める良い作品であったと思います。


 「井上玲音がJuice=Juiceの歌を・・・」#03


「井上玲音がJuice=Juiceの歌を・・・」#03

2.0

この曲のポイントとも言える印象的なピアノのリフをあえて変えたリミックスに惹かれました。この企画初のコラボでありながら曲中はそれぞれのソロショットで通し、最後に初めてふたりが同じ画面に映るという趣向や、その最後のカットでシネスコサイズの幅広い画面を効果的に使っているのも良いです。


『ハッケン!音楽塾』 【コード#01】『フラリ銀座』『スッペシャル ジェネレ~ション』から学ぶハロプロ歌謡のツボ~ハロプロで学ぶ音楽理論


【コード#01】『フラリ銀座』『スッペシャル ジェネレ〜ション』で学ぶハロプロ歌謡

ツボ〜ハロプロ音楽理論〜

1.5

感覚で語られることの多いポピュラー音楽・アイドル楽曲について理論で語る視点を広めようという『ハッケン!音楽塾』の趣旨はすごく意義のあることだと思っています。どの回も興味深いのですが、特にこの回は喩えと実例をうまく使った解説がわかりやすく感じました。コード進行の解説は世に数多くあってそれぞれにわかりやすくするための工夫が凝らされていますが、その中でもこの回の説明はかなりわかりやすいと思います。


『ハッケン!音楽塾』 【仕事#01】職業作曲家のリアル!お仕事内容紹介編~ハロプロ音楽理論


【仕事#01】職業作曲家のリアル!お仕事内容紹介編〜ハロプロ音楽理論〜

1.0

もうひとつ『ハッケン!音楽塾』から。なかなかリスナーが知る機会がなく、それゆえに誤解されることも多そうな職業作曲家の仕事内容を詳しく説明することで、プロダクトとしての楽曲の制作過程を示してくれたのが有意義な回だと思っています。


推しメン部門


保田圭


保田圭『君への歌~Always Love~@ミュージックレストラン La Donna


私にとっては変わらず、いまに至るきっかけであり始まりである重要な存在です。

 

 

 

 

全体的な感想みたなもの

 以上が私の投票内容です。

 楽曲部門はすべて同点の2点で、順番は大体この順で選んだということで。

 『意識高い乙女のジレンマ』『KOKORO&KARADA』は迷わず決めて、候補に考えていた曲を改めて何度か聴いて『空を遮る首都高速』と『Yellow Butterfly』を。

 最後の5曲目はかなり迷いました。結局、曲を聴き返す中で『抱きしめられていたい』のラストのフレーズの力に抗えなかった、という感じです。

 迷った末に外したのは、和田彩花さん『ホットラテ Hot latte』と、中島卓偉さん『ポツンと』。『ホットラテ Hot latte』は冒頭リズムパートがないのに2拍4拍に入るボイス系の和音とピアノのエフェクトでビートを感じさせるところが好きで、Juice=Juice『ポツリと』のセルフカバーである『ポツンと』は、歌詞が一部変わることで恋愛の中の孤独を歌っていた原曲からより普遍的な孤独を歌う曲へとなっているのが惹かれた部分でした。

 

 MV部門はデフォルトのままの配点で。

 こちらも『意識高い乙女のジレンマ』と『『あなたが選んだもの、あなたが選ぶもの』は迷わず決めて、最後は楽曲部門を選ぶ過程で何度も見ているうちに引き込まれた『ホットラテ Hot latte』を選びました。

 ほかには、Juice=Juice『好きって言ってよ』も候補に考えていました。わりとシンプルな構成ですが、1番Bメロでセットの奥行きを使ってメンバーを見せていくカットがなんか好きなんですよね。

 こぶしファクトリーのラストシングル2曲も印象深いミュージックビデオなのですが、2曲がつながる構成になっていたため、1曲選ぶとなると選びにくかったです。

 

  YouTube部門もデフォルトの配点です。

 はい、察しの良い方はお気づきかもしれませんが、3本選ぶのだと思いこんでいました(笑)。なのですべて『「井上玲音がJuice=Juiceの歌を・・・」』でと考えていたのですが、投票の段になって5本だと気づき、期限もギリギリだったためもう一度選び直すのも難しく、記憶に残っていた『ハッケン!音楽塾』の2本を追加したというかたちです。

 投票対象はかなり幅広かったわけですが、「楽曲大賞」なので音楽がメインのものの中から選ぶというのはなんとなく自分の中で意識していました。

 

 推しメン部門は、もうこれはなんの迷いもなく。

 

 今年は社会全体のこの状況の中でハロプロ関連のリリースが少なく、当然、楽曲部門、MV部門のノミネートも例年に比べて少なくなりましたが、個人的にはYouTubeのみで配信の曲なども含めバラエティに富んだ楽曲があったと感じています。だから選考も例年と比べ難しかったということはなかったかな。

 ただ、個人的な事情で11月から12月まであまり時間がとれなかったため、投票対象でもチェックできなかった作品があったり、投票コメントも充分に練れなかったりと、心残りのある今回の楽曲大賞となりました。

 

 結果発表も間近に迫っていますが(この更新をしているのは12月29日です)、実はここ数年は楽曲大賞の全体の結果はあまり気にしなくなってきました。

 それよりも、ほかの方々がどういう曲を選び、その曲をどう捉えていらっしゃるのか、投票内容やコメントを見るのを楽しみにしています。

 すでにブログなどで何人かの方の投票内容を読んで楽しませていただいていますし、今後も私はそういう感じで楽曲大賞を楽しんでいこうかなと思っています。 

恋時計

先日、YouTubeハロー!プロジェクトのコンサートやファンクラブ向けイベントの公式ダイジェスト映像が何本か公開されました。メンバーのコメントや字幕などから海外のファンの方をメインターゲットに想定しているもののようですが、本来は観られる方が限られているイベントなどの模様が観られるのはありがたいことです。

 さて、公開された動画の中のJuice=Juice金澤朋子さんバースデイイベントアンコール公演ダイジェスト映像で、つばきファクトリーの『ふわり、恋時計』が歌われているのですが、これが素晴らしい!
 ひとりのシンガーによって歌われることで、歌詞の主人公の気持ちの移ろいが、より鮮明に、繊細に、ひとりの人の感情の揺らめきとして表現されているように感じます。

 “手折って”から始まり“君だけに見られたくて”まで続くサビでの「て」の脚韻も、流麗に美しき引き立っていると思います。
 もともと『ふわり、恋時計』は好きな曲ですが、金澤さんの歌唱によって、また楽曲の新しい表情が観られた気がしています。
 イベントで金澤さんが歌ったと知ってから見て(聴いて)みたいと思っていたのですが、ワンコーラスだけとはいえ映像で触れられる機会があってよかったです。

 


Juice=Juice Tomoko Kanazawa BirthdayEvent 2020 Encore Performance』Digest(1st Performance)

(『ふわり、恋時計』は4分45秒くらいからですが全編よいのでよっぽどのっぴきならない事情でもない限り最初から最後まで観ましょう)

 


 以下は『ふわり、恋時計』についてちょっと余談。
 この曲は、過去の痛みから恋愛を避けていた主人公の、新たな出会いで変わりはじめた心を動き出した時計に喩えた歌詞で、歌詞だけでなくサウンドでも時を刻む秒針の音が印象的に使われえています。
 楽曲の制作工程を想像すると、歌詞で「時計」が使われていたから編曲の段階で時計の音が取り入れられたと考えるのが自然かと思います。
 ただ、この曲の作曲者の星部ショウさんがご自身の公式サイトで書かれた ライナーノーツ“制作時に大好きで聴いていた”曲のひとつとして挙げられているのがZedd, Alessia Caraの『Stay』。
 別れの予感を感じる中でStay=ここにいてほしいと歌う切ない曲で、別れが留めようもなく近づくのが“The Clock is Ticking”と歌われ、時計の音も使われています。


Zedd, Alessia Cara - Stay (Lyric Video)


 もしかしたら、歌詞が付く前のデモ音源の段階で『Stay』を意識して時計の音が使われていて(さらに可能性としては仮の歌詞に「時計」が出てきていたのかも)、それが「恋時計」というフレーズに発展したのではと、そんな想像も膨らむのでした。

映画『音響ハウス Melody-Go-Round』

  11月14日より公開されている映画『音響ハウス Melody-Go-Round』を先日鑑賞しました。
 簡単に説明すると、東京・銀座にあり、多くのミュージシャンが使用し数々の名盤が生まれる場となったレコーディングスタジオ・音響ハウスの歴史をミュージシャンや関係者の証言で綴るドキュメンタリー映画なのですが、映画の冒頭を飾るのはギター・佐橋佳幸さん、キーボード・井上鑑さん、ドラムス・高橋幸宏さんが3人一緒にスタジオに入り、エンジニアの飯尾芳史さんとともにおこなうレコーディングの様子。この映画は、映画のために作られた新曲の制作過程を追うドキュメンタリーでもあるのです。
 新曲のレコーディングに参加するのは、前述のメンバーに加え、ヴァイオリンの葉加瀬太郎さんや、村田陽一さん、本田雅人さん、西村浩二さん、山本拓夫さんのホーンセクション、コーラスと作詞をつとめる大貫妙子さんといった日本を代表するミュージシャンたちと、まだ十代前半のヴォーカリスト・HANAさん。
 このメンバーによるレコーディングの光景が実に面白い! 熟練のミュージシャンたちの、高度な演奏を追求しつつも決して緊迫することのない様子は観ていて楽しくなります。自らもレコーディングエンジニア出身で、ミュージックビデオなどを手掛けてきたという相原裕美監督の、自然にスタジオの空気を切り取ったように見せる手腕もお見事です。
 また、レコーディング・映画撮影は2019年におこなわれており、高橋幸宏さんが脳腫瘍の手術を受け療養中である現在、元気にドラムを叩きお話をする姿が映し出されることにも特別な感覚がありました。

 映画の中で制作された楽曲『Melody-Go-Ronud』はデジタルシングルとしてダウンロード販売やストリーミング配信がすでに始まっており、ミュージックビデオのショートバージョンがYouTubeでも公開されています。

 


Digital Single「Melody-Go-Round」Music Video(Short ver.)

 

 もちろん、レコーディング風景に加え、さまざまなミュージシャンが語る音響ハウスにまつわるエピソード、そして映画の最後にほぼすべての出演者に共通して投げかけられるある問いとその答えも興味深いものでした。

 私にとっては、映画の中心となる佐橋佳幸さんと飯尾芳史さんをはじめ、所有するCDにお名前のあるミュージシャン・クリエイターが大勢出演しているということでたまらない作品だったのですが、そうでなくてもレコーディング、音楽制作などに関心がある方なら楽しめる作品ではないかと思っています。たとえば、アップフロントの配信番組『アプカミ』でのレコーディング映像を面白く感じる方なら、この作品も楽しめるのではないかと思います。

 また、この作品は人が“集まる場”とそこで生まれるものを描いており、それは奇しくも現在に特別な意味を持っていると思います。

 上映館は限らているのですが、もし興味を持たれて機会があればぜひご覧ください。

 

onkiohaus-movie.jp


映画「音響ハウス Melody-Go-Round」予告

 

二本の鳥が示すもの――『空の青さを知る人よ』に登場する楽器について思うこと

【簡単な前置き】

 本日11月11日は、並んだ4つの「1」が4本の弦に見えるということで「ベースの日」になっています。

 なにかしら「ベースの日」にちなんだ更新を、と思い、昨年ベースが登場する劇場用アニメ『空の青さを知る人よ』を観たときに書いたまま眠らせていた文章を一部手直しして載せることにしました。

 この映画の関連書籍やスタッフインタビューなどにはほとんど目を通していないので、すでにどこかで語られている話題だったらすみません。

 では、以下から本文です。

 

二本の鳥が示すもの

『空の青さを知る人よ』は、2019年に公開された劇場用アニメだ。
 舞台は埼玉県の秩父をモデルとした町。毎日ベース演奏に励む女子高生のあおい、あおいの姉で役所に勤めるあかね、かつてのあかねの恋人で演歌歌手のバックバンドとして高校卒業以来13年ぶりに町に戻ってきた慎之介=通称・しんの、そしてあおいの前に現れた高校時代のしんのの3人(4人)を中心に、ファンタジックな展開も交えた物語が綴られていく。
 この作品を鑑賞したとき、劇中に登場するベースやギター、アンプなどの楽器類が、メーカーのロゴまでそのままなほど写実的に描かれていることに驚いた。さらに驚いたのは、その綿密な楽器の設定が、作品の中でしっかりと役割を持っているように感じられたことだった。

 ヒロインのあおいが劇中で使用するベースは、エピフォン(Epiphone)というメーカーのサンダーバードThunderbird)という楽器だ。サンダーバードはいくつかバリエーションがあるが、あおいの愛器はThunderbird Proというモデルである。映画公開時点では楽器店で見かけることも多かったし*1、店頭価格5〜6万円なので高校生が持つ楽器という設定にあっている。

 このあおいの愛器の製造元であるエピフォンは、もともとは独立した楽器メーカーだったが、ある時期からは大手楽器メーカー・ギブソンGibson)の傘下となっており、現在はエピフォン独自のモデルのほか、ギブソンのギターやベースの廉価版を製造するブランドとして知られている。サンダーバードも、もともとはギブソンのベースだ。

 そのギブソンの楽器も『空の青さを知る人よ』に登場している。上京したもののミュージシャンとして成功できず大物歌手のバックバンドをやっている慎之介が、バンドを組んでいた高校生時代に使っていたギターがギブソンのファイヤーバード(Firebird)なのだ。ファイヤーバードもバリエーションが多いが、しんのが使っていたのはファイヤーバード・スタジオというモデル。製造が始まったのは2000年代前半で、まさにしんのが高校生のころであるし、新品価格が10万円台とギブソンの楽器の中では低価格だったので、高校生のしんのが持っているのも不自然ではない。

 さて、サンダーバードとファイヤーバードという名前で気づく人もいるかもしれないが、この二者は兄弟モデルというか、ファイヤーバードのベース版がサンダーバードというような関係で、形状も似ている。
つまり、あおいとしんのはベースとギターという違いはあるが、同じ系列のメーカーの、ごく近いモデルを使っているのだ。

 あおいは、まだ幼かったころ姉と一緒にしんの達のバンドの練習を見ているうちにベースに興味を持ち、のちに自らベースを手にしたという動機が劇中で示されている。
 だが、高校時代のしんの達のバンドのベーシストが使っていたのはサンダーバードではない。またサンダーバードは決してベースとして一般的なモデルとは言えない。少なくとも、楽器店の店員が初心者に勧めるようなベースではないだろう。あおいが単に「ベースに」興味を持っていたのなら、サンダーバードは選ばないはずだ。あおいは、おそらく「あえて」しんのが使っていたギターと似たベースを選んでいるのだ。
 あおいがしんのに対してどんな感情を抱いているかは、劇中でも描かれている。だが、高校生になったあおいがサンダーバードを選んでいることが、その描写以上に、あおいのしんのへの深く、簡単には説明できない感情を示しているように思えるのだ。


 映画の中では、サンダーバードとファイヤーバードの関係は説明されていないし、楽器が意味を持つような描写、たとえば慎之介があおいのサンダーバードを見てなにかに気づくとか、あるいはあおい自身が自分がサンダーバードを選んだ理由を考えるといったような場面もない。だから、ここまで書いたことは私の考えすぎたことかもしれない。
 ただたとえそうであったとしても、私にとって楽器、特にベースやギターというのは、音楽を奏でる道具であると同時に、こんな想像を掻き立てられる存在でもあるのだ。

 


映画『空の青さを知る人よ』予告【10月11日(金)公開】

 

 

s

 

*1:2020年にエピフォンの製品ラインナップに大きな変更があり、Thunderbird Proはカタログ外となり店頭でも見かけなくなった

『のぼる小寺さん』の〈見る〉と〈触れる〉

【ちょっとした前置き】

工藤遥さん主演の映画『のぼる小寺さん』を鑑賞したあとに考えたことを書いてみました。

最初はどこか別の場所に載せようかと思っていたのですが(だから文体がいつもと違う)、あんまりここを放置するのもと思いここに載せることにしました。

映画の内容にラストも含めて思いっきり触れてますので映画を未見の方は読まないのがおすすめ。

では、このあとから本文です。

 

 

 

『のぼる小寺さん』の〈見る〉と〈触れる〉

 ひたむきにボルダリングに打ち込む高校生女子・小寺さんを主人公にした映画『のぼる小寺さん』。この映画は〈見る〉ことと〈触れる〉ことについての映画だと捉えることができるかもしれない。

 映画では冒頭から〈見る〉という行為が強調されている。物語のもうひとりの主人公である卓球部の男子・近藤は、体育館で練習する小寺さんをずっと見ており、そのことを周囲に指摘されたりしている。
 近藤だけでなく主要なキャラクターの多くが、小寺さんが練習する姿や練習で荒れた小寺さんの手のひらを〈見る〉のをきっかけに小寺さんに惹きつけられ、やがてそれぞれの目標を見出していく。「小寺さんを見てると」といったセリフも何度か登場する。
 進路調査書を白紙で提出するような、漠然と日々を過ごしていた登場人物たちが、小寺さんを〈見る〉ことで変わっていく。この映画はそういう物語といえる。
 では〈見られる〉存在である小寺さんの側を考えてみるとどうだろう。
 小寺さんは〈見られる〉ことに無自覚なキャラクターとして描かれている。他人の視線を意識しないとも言える。だから小寺さんは、練習用ウォールの具合をたしかめるために制服のままでウォールを登ってしまうし、ラーメンを食べるとき椅子の上に脚を上げて先輩に行儀が悪いと注意されたりする。
 だがそんな小寺さんは、映画の中のある時点で〈見られる〉ことを意識しだす。
 カメラ好きの女子生徒・田崎は、ひそかに小寺さんの写真や動画を隠し撮りしていた。田崎が撮った練習中の自分の動画をたまたま目にした小寺さんは、自分がイメージ通りにクライミングできていないことを知り、田崎に練習を撮影してほしいと頼む。他者の視点によって得られるものがあることに、小寺さんは気づくのだ。
 近藤や田崎たち周囲の登場人物たちが物語を通して明確に変わっていく中で、小寺さんはただひたすらボルダリングに一生懸命な存在のまま、映画のラストまで変わっていないようにも見える。しかし、実は小寺さんも他人に〈見られる〉ことで築かれる関係を知り、変わっているのではないか。
 映画のラストで小寺さんに告白をする近藤が、自分のことを見てほしいと告げるのは、この流れを踏まえると実に自然だ。

 

 もうひとつ、映画『のぼる小寺さん』では〈触れる〉ことが慎重に描かれているように感じる。
 小寺さんと同じクライミング部の男子部員・四条が、勝手にウォールに登ろうとする生徒を止めようとして揉める場面がある。このとき、その場に居合わせた近藤は、心配そうに四条に声をかけるものの、四条に手を差し伸べたりはせず見ているだけである。ここで近藤と四条の間にあるのは〈見る〉〈見られる〉関係なのだ。その近藤と四条は、文化祭の準備をする中で自然に互いの心境を明かし、このとき四条は近藤に〈触れる〉。
 また、文化祭の最中に四条がある女子生徒と付き合っていることが明らかになるのだが、回想で描かれる告白場面で、その女子生徒が四条に告げているのは「ずっと見てました」という言葉だ。この時点での四条とその女子生徒の間にある関係も〈見る〉〈見られる〉なのだ。それがすでに付き合いはじめている文化祭中の場面になると、その女子生徒は別れ際に四条に〈触れる〉。
 近藤と四条も、四条と女子生徒も、その間に築かれたつよい関係を表現するときに〈触れる〉という行動が使われているように思える。
 映画の中で、小寺さんが誰かに〈触れる〉場面は少ない。派手目な女子生徒・倉田にネイルをしてもらう場面で小寺さんと倉田はお互いの手に触れているが、これはネイルをするというちょっと特殊なシチュエーションだ。
 だからといって小寺さんが〈触れる〉関係と無縁なのかというと、そんなことはない。小寺さんは岩場でクライミングするときに「岩さん、よろしくお願いします」と岩に抱きつくし、練習で日々ウォールに触れている。小寺さんは、ほかならぬボルダリングそのものと、つよい関係を築いている。

 

 映画のラストで近藤に告白された小寺さんは、近藤と背中合わせになり、もたれかかるようにして近藤に〈触れる〉。

 いままで見られることを意識せず、登る先だけを見て、ボルダリングだけに触れてきた小寺さんは、見られることを意識し、誰かを見て、触れる関係を、まだぎこちないけれど築きはじめようとしている。物語のラストは、そんな小寺さんのスタートだ。

 

www.koterasan.jp


【7.3公開】映画『のぼる小寺さん』90秒予告

 

ハロプロ楽曲大賞’19

毎年恒例の「ハロプロ楽曲大賞」、2019年も参加しました。以下に私の投票内容を記載します。(※12月11日付けになっていますが、内容を記載したのは30日です)

 

楽曲部門

つばきファクトリー『ふわり、恋時計』


つばきファクトリー『ふわり、恋時計』(Camellia Factory[Softly, the clock of love.])(Promotion Edit)

四七抜き音階をベースにした「和」を感じさせるメロディ。歌詞もその雰囲気に合わせた言葉がセレクトされていますが、しかし「和」にこだわりすぎることのない絶妙なバランスの仕上がりになっていると思います。「さよならの残像」や「かさぶた」というフレーズで、過去の恋が残したものを説明するのではなく感じさせるのも好きな部分です。そして、サビで「て」で脚韻していくのが印象的なのですが、その始まりが「手折って」なのが素晴らしい。日常的に使われる言葉ではないからこその固さや静謐さが、この曲全体の色を決め、戸惑いながらも自分の心に向き合う主人公の凛とした在りようを描き出していると思います。

 

こぶしファクトリーハルウララ


こぶしファクトリー『ハルウララ』(Magnolia Factory [Haru Urara-Beautiful Spring])(Promotion Edit)


「見守ることはできるけど、見守ることしかできない」関係を描く歌詞。メンバーの声が、歌が、その関係の中にある感情をより繊細に、そして鮮やかに際立たせていくようです。特に間奏明けのパートが描く感情は絶品。さらに、曲を表情豊かに染め上げていく多彩なコーラスワークや印象に残るフェイクなども印象に残るところ。もちろん、どこか郷愁を誘うような12弦ギターの響きや、歌心あふれるドラム、メロディアスなギターソロなど、歌に寄り添い支えるようなアレンジワークも気持ちいいところです。ドラマティックに曲の世界を作り上げていく「声の力、歌の力」を感じた1曲でした。

 

Juice=Juice『微炭酸』


Juice=Juice『微炭酸』(Juice=Juice[Lightly Sparkling])(Promotion Edit)


爽やかなイメージを連想しがちな『微炭酸』というタイトルで切ない歌という心地よい裏切り感。しかもただ意外性を持たせるだけでなく「弾けた」恋や「弾け切れない」私というように「微炭酸」という単語を巧みに「叶わなかった恋」と結びつけていく歌詞に惹かれました。また、歌詞が基本的に「状況」や主人公の「心情」の描写で進んでいく中、Cメロ明けでスッと「情景」の描写を入れることで絵を浮かばせるところも好きな部分です。一度聴いたら覚えられるほど印象の強いサビのメロディや、自然に転調の流れを作っていくメロディも見事。イントロで下降したフレーズが、同じ音色で上昇して終わるところがドラマを感じさせます。

 

カレッジ・コスモス『わたし革命』


カレッジ・コスモス『わたし革命』(College Cosmos [My Revolution])(MV)

ファーストシングルに比べメンバーのソロパートが増えてより「個」を印象づけるカレッジ・コスモスのセカンドシングル曲。上下の動きが大きなメロディはファーストから一貫した部分ですが、特にこの曲では山木梨沙さんの声質がメロディの高音部分をより引き立てていて耳に残るところ。歌詞の面でも前作から引き続き、学生時代の葛藤やSNSといった題材をうまく歌詞に織り込んでいると思います。そしてサビの「わたし革命 鳴らせファンファーレ」でのエ段での脚韻(「革命」の「め」が強く発音されるため)がとにかく気持ちいい。ベースのフレージングや、イントロからAメロでのギターの単音カッティングのカッコよさなど、インスト面でも聴きどころ満載。

 

Juice=Juice『ポツリと』


Juice=Juice『ポツリと』(Juice=Juice[Solitary])(Promotion Edit)

セヴンスの音を印象づけるピアノのフレーズの反復と、人工的なサウンドのリズム、U2風のディレイのかかった幻想的なギター。むしろ無機的な雰囲気を漂わせるサウンドから、サビで一転、ストリングスなどが加わり荘厳さすら感じさせるスケールの大きなサウンドへと変化するところが魅力です。「ポツリと」独りでいることの寂寥感を歌うサビが雄大サウンドに乗った厚みのあるユニゾンで歌われるのは歌詞の内容とあっていないようでもありますが、逆説的に歌詞で綴られる感情を強く訴えていると思います。間奏明けのソロパートで、ほかのパートでは抑えられていたような生々しさを感じさせるのも魅力的です。

 

MV部門

こぶしファクトリーハルウララ

ロケパートでは(おそらく)桜の花を目立たせるためにかなり暖色系に振ったカラーグレーディングがされていますが、それゆえにメンバーの衣装の一部に使われているブルーや何度か映し出される青空の青が引き立って美しい絵を作っています。特に冒頭のカットでのヘッドフォンの色がアクセントとなった色合いのバランスが素晴らしいです。イメージシーンでのシルエットを用いた演出も巧みだと思いました。


カントリー・ガールズ『One Summer Night ~真夏の決心~』


カントリー・ガールズ『One Summer Night ~真夏の決心~』(Country Girls [One Summer Night -midsummer decision-]) (MV)


  本来は恋愛の歌であるところを、歌詞で描かれているシチュエーションやイメージを活かしつつも重心を恋愛から女子グループの友情へとスライドさせ、爽やかさと切なさのある青春ストーリーとして映像化しているところにうまさを感じました。スマートフォンに表示されるメッセージを用いることで、セリフや過度に説明的なカットを使うことなくストーリーを伝えているところもテクニックを感じた部分です。

 

カレッジ・コスモス『夢は意地悪』


カレッジ・コスモス『夢は意地悪』(College Cosmos[Dreams are mean.])(MV)

メンバー自身による文章を文字として映し出すというストレートな手法を使う一方で、メンバーの衣裳の色とリンクするような「白い部屋と青空」「白とブルーの風船」、さらに「他者の視線」を象徴するようなカメラ、歩いている・駆け出す足元という、直接的ではないイメージ描写を重ねることで葛藤や迷い、そこからの決意を感じさせている点が印象に残りました。光と影の巧みな使用も好きな部分です。


推しメン部門

保田圭

理由は簡単にはまとめられないので割愛とさせていただきます。

 

後記的なもの

楽曲部門はこの順番で投票しましたが配点はすべて同一の2.0、MV部門はデフォルトの3.0、2.0、1.0という配点にしてあります。

実は楽曲部門ではわたし的に大きな出来事がありました。ハロプロ楽曲大賞に参加しはじめて以来、おそらく初めて娘。の曲を入れませんでした。娘。のノミネート曲が少なかったという理由もありますが、投票する曲を考えているときに『I surrender 愛されど愛』は入れるかどうかはすごく悩みました。ただ、実際に投票したほかの曲のほうにつよく惹かれてしまったというところです。

こうして自分の選んだ5曲を見てみると、今年は奇をてらわずストレートな曲に私の志向が向いていたのかなと思っています。

また、今回5曲すべてシングル曲となっていますが、別に自分でシングル曲だけから選ぼうと縛りを設けていただけではなく、たまたまつよく惹かれた曲を5曲選んだらシングル曲になったということです。

MV部門は、印象に残っていた3曲であまり迷わず。

推しメン部門は、まあ当然ですよね。

 

今回も、ほかの方のコメントなどを見るのを楽しみにしています。