『シャインポスト』は《ありふれない》

 7月から放送・配信されているアニメ『シャインポスト』を毎回楽しく観ています。
 女性アイドルグループを題材とした作品です。主人公は、100人レベルの会場も埋められないアイドルグループ・TiNgS(ティングス)。大会場での単独コンサートを満員にできなければグループ解散と告げられた彼女たちが、ある「能力」を持つ新任マネージャーのアドバイスを受けながら、少しずつステップアップしていく物語です。
 作品を知ったきっかけは、たまたまツイッターのタイムラインに「面白い」という感想ツイートが流れてきたことでした。なんとなく興味を惹かれてアイドルものだという知識もないまま配信で第1話を観たところ続きが気になり、その時点での最新話だった4話を観終えたときにはすっかり引き込まれていました。
 なぜこの作品に惹かれるのか自分でもよくわかっていなかったのですが、その後も視聴を続けるうちにその理由が少し「見えてきた」感じがしたので、ここに文章としてまとめておこうと思います。

 『シャインポスト』の登場人物は誰も、たとえば「いつも明るく前向き」であったり「ちょっとトボけた優等生」だったり「自信満々でわがまま」だったり、ヴィジュアルも含め、みんな「わかりやすいキャラ」のように見えます。
しかし、物語が進んでいく中で、実はその「キャラ」は、あえて「そう振る舞っている」もので、その奥にある人物像が浮かび上がってきます。
 この過程が実に魅力的です。
 オープニング主題歌の歌詞に「つきたいウソなんて あるわけないよ」とあるように、『シャインポスト』は「ウソ」が作品の大きなキーとなっています。
 『シャインポスト』は、この「ウソ」=表面的なキャラと、その向こうにあるものを描くことで¥、登場人物を「ありがちなアニメキャラ」に留まらず、作品世界の中で「生きている人物」として描き出そうという姿勢があるように感じています。
 また、その人物を描くための語り方も巧みです。2話あるいは3話で構成されるひとつのエピソードは、序盤はコミカルな描写も織り交ぜられ、ライトなタッチです。そのため作品にすんなりと入っていきやすく、いつの間にか登場人物の深い部分に触れていく展開に、自然に引き込まれていきます。
 この「導入は入っていきやすい」語り方は、登場人物が「一見するとわかりやすいキャラ」であるのと相似であると言えるかもしれません。

 ほかにも、登場人物のひとりが「ダンスが下手」という設定を、セリフで説明したりダンスレッスンで転ぶといったわかりやすい表現を使うだけでなく、ライブシーンで「ほかのメンバーと動きがズレている」のを映像として見せる技術も見事です。

 そして、各エピソードのクライマックスが必ずライブシーンに設定され、ステージでのパフォーマンスとファンのリアクションの中で登場人物が答えを見出していくところは、この作品が、アイドルを「ステージでファンにパフォーマンスを見せる存在」であることを大事にしているように思えて、好ましく感じるところです。

 おそらく『シャインポスト』は、簡単な作品紹介などを見たときに「こういうアニメなのかな」と想像するのとは、少し違った作品になっているのではないかと思います。この作品ならではの魅力をたくさん持った、独特な作品であると思います。
 多くの動画配信サービスで配信されているので、興味を持たれたらぜひご覧になっていただきたいです。私が特に好きなのは4話と7話なのですが、1話から観ないと面白さが充分に伝わらないと思うので結局は全話観ようねってことですね。

 新型コロナウイルス感染症流行の影響による製作遅延により一時休止していた放送・配信もいよいよ再開。物語がどう展開していくのか、そして主要な登場人物の中でまだその人物像が描かれていないマネージャーの「キャラの向こうにあるもの」は描かれるのか、楽しみにしています。

 

※文中引用はTINGS『ワンダー・スターター』(作詞:ヤマダヒロシ/作曲:高田暁)より

 


www.youtube.com

 

anime.shinepost.jp

 一応このブログはハロプロの話題を書くはずのブログなので最後に『シャインポスト』とハロプロの関係を書いておくと、主人公たちの目標となるコンサートの会場はハロプロでおなじみ中野サンプラザだよ!
 あと劇中に登場する人気アイドルグループ・HY:RAIN(ハイレイン)のメンバーのひとりの担当声優はBEYOOOOONDSの高瀬くるみさんだよ!