ハロプロ楽曲大賞'20
今年もハロプロ楽曲大賞に参加しました。私の投票内容とコメントをここにも記載しておきます。(記事の日付は12月23日になっていますが実際に内容・コメント、全体的な感想を追記したのは12月29日です)
楽曲部門
『意識高い乙女のジレンマ』つばきファクトリー
つばきファクトリー『意識高い乙女のジレンマ』(Camellia Factory [The dilemma of a girl who’s self-aware.])(Promotion Edit)
2.0
無機質にも感じるサウンドに乗った少し気だるげな独白から始まり、徐々に高まりを見せる「葛藤」。その葛藤の内容がアイドルの楽曲としてはわりと珍しく思えるものだったり、サウンドも歌詞も含めた楽曲全体のちょっと不思議な雰囲気に惹きつけられました。発音しにくいために普通なら歌詞では避けそうな「取捨選択」という言葉を使っていたり、本来の言葉の順序を入れ替えてあえて不自然にしたような「恋を知らなきゃ 愛はできない」という一節など、歌詞がちょっと癖のある感じになっているところも好きですし、やはり歌詞の面で「なんて」と「ナンセンス」「ナッシング」の押韻の気持ちよさもすごく好きです。
『KOKORO&KARADA』モーニング娘。'20
モーニング娘。'20『KOKORO&KARADA』(Morning Musume。’20 [Minds & Bodies])(Promotion Edit)
2.0
あえて音の隙間を感じさせるようなサウンドと、Bメロでふたつの異なるメロディ・歌詞が同時に歌われ(KOKOROとKARADAを象徴するかのように)ひとつに融合していくところなどが好きなところです。そしてサビの「君が好きさ」は、サ行の持つ摩擦感がこのフレーズを音として強く耳に残し、様々な感情を経て帰着したシンプルなメッセージを際立たせていると思います。
『空を遮る首都高速』和田彩花
2.0
リズムパートやシーケンスフレーズのシンセサウンドと、ピアノやストリングス、シェイカーといった生楽器系のサウンドの融合が心地いいです。パートによってベースサウンドの有無を巧みに使っているのも好きなところ。歌詞にはあまりポップミュージックでは使われないような言葉も使われ、ただ気持ちよく流れていくだけではない引っかかりのある作品になっているのも魅力です。
『Yellow Butterfly』吉川友
吉川友さんは曲によっては曲を提供するクリエイターの色を強く感じることもあったのですが、この曲ではナチュラルな吉川さんを感じました。本人が初めて手がけたという歌詞は、「冷や汗」と「幸せ」、「雑踏」と「颯爽」「葛藤」と、響きの似た言葉を重ねるテクニックも見事。いままでの道のりを振り返るような歌詞にデビュー曲のフレーズも用いて「これまでとこれから」を前向きに感じせる爽快感が気に入った部分です。
『抱きしめられてみたい』つばきファクトリー
つばきファクトリー『抱きしめられてみたい』(Camellia Factory [“I want to be hugged.”])(Promotion Edit)
2.0
「きみ」との関係に感じる漠然とした不安を歌った1曲……と思いきや、曲の最後にその不安の具体的な理由を明かすという、ちょっとトリッキーな仕掛けにドキリとさせられました。もちろんその仕掛けだけでなく、情景描写から感情へと移っていく歌詞の構成や、不安定な心を象徴するようなサビの半音の音使いも好きなところです。
MV部門
『意識高い乙女のジレンマ 』つばきファクトリー
3.0
冒頭からさまざまなかたちで提示される「円」のモチーフ。間奏でその「円」のひとつであるシャボン玉がサウンドに合わせて弾けるカットにやられました。画面のサイズが現在では一般的でない4:3のスタンダードサイズなのも、個人的に昔観たフィルム撮影のアート作品を思い出して魅力を感じた点です。途中で映る時計の針がつばきファクトリーの結成日やこの曲のリリース日を指しているという細かな仕掛けも好きなところ。
『あなたが選んだもの、あなたが選ぶもの』和田彩花
【和田彩花】あなたが選んだもの、あなたが選ぶもの 【MUSIC VIDEO】
2.0
3分10秒あたりから、映像中の人物たちが顔を上げるのに合わせて画面の上下幅が広がっていくという、映像のフォーマットを表現手段として使う手法を面白く感じました。映像の中で冒頭からずっと左から右へと歩いていた和田さんが、最後に振り向き右から左へと数歩歩むのも印象的でした。歌詞の内容をイメージ的に表現し、余地や余白の多いところが魅力的に感じたミュージックビデオです。
『ホットラテ Hot latte』和田彩花
1.0
本人の顔も姿も一切登場したいのですが、間違いなく映像に和田彩花さん自身を感じるように思いました。見ていると特にラテの映像に引き込まれ、繰り返し見たくなります。「アイドル」のミュージックビデオとしてひとつの可能性を示してくれたように感じています。
YouTube部門
「井上玲音がJuice=Juiceの歌を・・・」#08
3.0
リリースされたバージョンのアレンジを感じさせつつ、ギターをメインにしてソリッドになったアレンジがとにかく好きです。ナチュラルに歪んだギターの音やBメロでかけられたトレモロがたまらない。映像も、それぞれのソロショットではふたりが向かい合わせとなっている構図を連想させつつ、実際に一緒に映るショットでは視線が交錯しない背中合わせの位置という演出、全体の色調なども気に入っています。
「井上玲音がJuice=Juiceの歌を・・・」#01
2.5
歌声はもちろん、ヴィンテージのローズ・ピアノのサウンドが堪能できるという点でも好きな映像です。ちょっとドキュメンタリー的な雰囲気もあり「Juice=Juiceの井上玲音」への期待感を高める良い作品であったと思います。
「井上玲音がJuice=Juiceの歌を・・・」#03
2.0
この曲のポイントとも言える印象的なピアノのリフをあえて変えたリミックスに惹かれました。この企画初のコラボでありながら曲中はそれぞれのソロショットで通し、最後に初めてふたりが同じ画面に映るという趣向や、その最後のカットでシネスコサイズの幅広い画面を効果的に使っているのも良いです。
『ハッケン!音楽塾』 【コード#01】『フラリ銀座』『スッペシャル ジェネレ~ション』から学ぶハロプロ歌謡のツボ~ハロプロで学ぶ音楽理論~
【コード#01】『フラリ銀座』『スッペシャル ジェネレ〜ション』で学ぶハロプロ歌謡
1.5
感覚で語られることの多いポピュラー音楽・アイドル楽曲について理論で語る視点を広めようという『ハッケン!音楽塾』の趣旨はすごく意義のあることだと思っています。どの回も興味深いのですが、特にこの回は喩えと実例をうまく使った解説がわかりやすく感じました。コード進行の解説は世に数多くあってそれぞれにわかりやすくするための工夫が凝らされていますが、その中でもこの回の説明はかなりわかりやすいと思います。
『ハッケン!音楽塾』 【仕事#01】職業作曲家のリアル!お仕事内容紹介編~ハロプロ音楽理論~
【仕事#01】職業作曲家のリアル!お仕事内容紹介編〜ハロプロ音楽理論〜
1.0
もうひとつ『ハッケン!音楽塾』から。なかなかリスナーが知る機会がなく、それゆえに誤解されることも多そうな職業作曲家の仕事内容を詳しく説明することで、プロダクトとしての楽曲の制作過程を示してくれたのが有意義な回だと思っています。
推しメン部門
保田圭
保田圭『君への歌~Always Love~@ミュージックレストラン La Donna
私にとっては変わらず、いまに至るきっかけであり始まりである重要な存在です。
全体的な感想みたなもの
以上が私の投票内容です。
楽曲部門はすべて同点の2点で、順番は大体この順で選んだということで。
『意識高い乙女のジレンマ』『KOKORO&KARADA』は迷わず決めて、候補に考えていた曲を改めて何度か聴いて『空を遮る首都高速』と『Yellow Butterfly』を。
最後の5曲目はかなり迷いました。結局、曲を聴き返す中で『抱きしめられていたい』のラストのフレーズの力に抗えなかった、という感じです。
迷った末に外したのは、和田彩花さん『ホットラテ Hot latte』と、中島卓偉さん『ポツンと』。『ホットラテ Hot latte』は冒頭リズムパートがないのに2拍4拍に入るボイス系の和音とピアノのエフェクトでビートを感じさせるところが好きで、Juice=Juice『ポツリと』のセルフカバーである『ポツンと』は、歌詞が一部変わることで恋愛の中の孤独を歌っていた原曲からより普遍的な孤独を歌う曲へとなっているのが惹かれた部分でした。
MV部門はデフォルトのままの配点で。
こちらも『意識高い乙女のジレンマ』と『あなたが選んだもの、あなたが選ぶもの』は迷わず決めて、最後は楽曲部門を選ぶ過程で何度も見ているうちに引き込まれた『ホットラテ Hot latte』を選びました。
ほかには、Juice=Juice『好きって言ってよ』も候補に考えていました。わりとシンプルな構成ですが、1番Bメロでセットの奥行きを使ってメンバーを見せていくカットがなんか好きなんですよね。
こぶしファクトリーのラストシングル2曲も印象深いミュージックビデオなのですが、2曲がつながる構成になっていたため、1曲選ぶとなると選びにくかったです。
YouTube部門もデフォルトの配点です。
はい、察しの良い方はお気づきかもしれませんが、3本選ぶのだと思いこんでいました(笑)。なのですべて『「井上玲音がJuice=Juiceの歌を・・・」』でと考えていたのですが、投票の段になって5本だと気づき、期限もギリギリだったためもう一度選び直すのも難しく、記憶に残っていた『ハッケン!音楽塾』の2本を追加したというかたちです。
投票対象はかなり幅広かったわけですが、「楽曲大賞」なので音楽がメインのものの中から選ぶというのはなんとなく自分の中で意識していました。
推しメン部門は、もうこれはなんの迷いもなく。
今年は社会全体のこの状況の中でハロプロ関連のリリースが少なく、当然、楽曲部門、MV部門のノミネートも例年に比べて少なくなりましたが、個人的にはYouTubeのみで配信の曲なども含めバラエティに富んだ楽曲があったと感じています。だから選考も例年と比べ難しかったということはなかったかな。
ただ、個人的な事情で11月から12月まであまり時間がとれなかったため、投票対象でもチェックできなかった作品があったり、投票コメントも充分に練れなかったりと、心残りのある今回の楽曲大賞となりました。
結果発表も間近に迫っていますが(この更新をしているのは12月29日です)、実はここ数年は楽曲大賞の全体の結果はあまり気にしなくなってきました。
それよりも、ほかの方々がどういう曲を選び、その曲をどう捉えていらっしゃるのか、投票内容やコメントを見るのを楽しみにしています。
すでにブログなどで何人かの方の投票内容を読んで楽しませていただいていますし、今後も私はそういう感じで楽曲大賞を楽しんでいこうかなと思っています。