香りのアンビヴァレンツ

つばきファクトリーは、メジャーデビュー以降のシングルで、切ない系の片思いソングをひとつの路線として確立したのが見事だと思います。
7月18日にリリースされるニューシングルでは『純情cm(センチメートル)』がその路線の曲。
同級生に抱く秘めた想いを歌ったこの曲は、序盤の「仲間内で放課後、寄り道」の「仲間内」と「寄り道」、「さりげなく 君の隣に行く」の「さりげなく」と「隣に行く」、2番の「夕闇のメロディ 寂しげなバス停」の「メロディ」と「バス停」のように、さりげない脚韻がすっと耳に入ってきて気持ちよいところ。
音程の大きな上下動で感情の揺れを表現しているようなサビも好きです。

また、ラストのサビの繰り返しでは一音上に転調してより高い音を使っているのに加えて、歌い方も1番、2番のサビとは変化させ、一層「昂ぶる想い」を感じさせているのも巧みなところだと思います。

 


つばきファクトリー『純情cm(センチメートル)』(Camellia Factory[Junjou cm])(Promotion Edit)


1番Bメロの歌詞「微かな香り 纏わせて」は、素直に読めば「君」を意識してフレグランスを付けている主人公の描写だと思います。ただ、ツバキの花言葉が「控え目な優しさ」で、それがツバキの花に香りがないことに由来するという説があることを踏まえると、別の意味を見出すこともできるかもしれません。
「香りを纏う」とは「控え目な優しさ」を持った自分から脱することの象徴。控え目を脱して「君」へ想いを届けたいと思う自分と、控え目なまま「君」との距離を保ちたいと思う自分。そのアンビヴァレンツが「赤く燃えてるジレンマ」なのかもしれません。

 

(引用はつばきファクトリー『純情cm(センチメートル)』作詞・作曲:大橋莉子 より)