つばきニューシングル

2月21日にリリースされた、つばきファクトリーのメジャー3枚目となるシングル、収録曲3曲ともYouTubeで配信されたミュージックビデオを観たときから気に入っています。

収録1曲目『低温火傷』を初めて聴いたときに感じたのは、歌詞の「音の選び方」の巧みさでした。
サビの冒頭のフレーズ

低温火傷してる胸中
気づいたときにはもう遅すぎる 

は、どちらも最後が口をすぼめて発音するウ段の音で終わっており、メロディも最後の音を伸ばさないので「閉じて終わる」フレーズになっています。それが続く

時よ止まれ ずっとずっと強くぎゅっと

抱きしめて

と、口を大きく開けるエ段・オ段の音を多用したフレーズの「開いた感じ」を強調し、フレーズに込められた「抑えきれない感情」をより効果的に伝えていると思います。

また、Bメロの

「小さい手だな」握られたら

男の子って身軽なのね

の、1番では「だな」「たら」の「A・A」、2番では「子って」「のね」の「O・E」での脚韻もメロディのアクセントとあいまって、ひじょうに耳に残る印象深さを生み出していると思います。

サウンド面では、隠し味的に使われていたアコースティックギターが間奏で全面に出てくるのも好きなところです。
ハーモニクスの音やボディを打楽器のように叩くボディヒットも織り交ぜた(もしかしたら「押尾コータロー風に」とオーダーがあったかもしれない)フレーズをさらにデジタル的に加工しているのも効果的だと感じます。

(引用はつばきファクトリー低温火傷』作詞:児玉雨子/作曲:大橋莉子 より)

 


つばきファクトリー『低温火傷』(Camellia Factory [Low-Temperature Burn])(Promotion Edit)




収録2曲目『春恋歌』は、オリエンタルな音階を取り入れたメロディが印象に残るポップなナンバー。
面白いのは、ポップな曲調なのにサウンドはエレキギターアコースティックピアノをメインに構築されていて(ピアノは生ではないようですが)、シンセはストリングスとパッド系の音が使われている程度で、いわゆる電子音がほとんど入っていないところです。
オリエンタルなメロディの曲ではそれを引き立てるようなシンセ音が使われることも多いと思いますが、あえて違うアプローチをしているのがこの曲の気持ちよさのひとつの理由になっていると思います。

 


つばきファクトリー『春恋歌』(Camellia Factory[A Spring Love Song])(Promotion Edit)



収録3曲目『I Need You ~夜空の観覧車~』は、冒頭で8分を刻むピアノの音にU2風のディレイギター、4つ打ちのキック、ベースが加わり淡々と曲へと導いていく感じに一気に引きこまれました。

間奏の転調も、始まる恋に抱えるほのかな不安を象徴するようでよいではないですか(ミュージックビデオでは映像もその感覚を引き立てます)。
最後のサビのリフレイン前に「音を抜くこと」で逆に盛り上げていく技も見事です。


サビの歌詞で繰り返される「I need you…」を「世界中」で受ける脚韻も気持ちよいのですが、その「I need you…」の繰り返し、1番、2番では声が中央に定位しているのが、最後のサビではまるでメンバーひとりひとりの立ち位置を感じさせるかのように左右に振られて定位しているのはこの曲の大きな聴きどころだと思います(笑)。

 


つばきファクトリー『I Need You ~夜空の観覧車~』(I Need You ~The Ferris Wheel in the Night Sky~)(Promotion Edit)




真冬の歌から春の歌までが1枚に収められた今回のシングル、特に『低温火傷』は季節が合わない感じがしないでもありませんが、この曲に関しては昨年12月の各音楽配信サイトでの先行配信が季節に合わせたリリースで、CDとしてのリリースは既発表曲がアルバムに収録されるのに近いと考えてもいいのではないかと、別の角度からそんなことも考えるシングルでした。